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魚類蝟集メカニズムに関する研究

人工魚礁とは魚を集めるために作られた構造物のことです。しかし、なぜ集まるのか未だに明確に分かっていません。そこでバイオテレメトリー調査(魚類に発信機を埋め込み、その音波から行動情報を取得する)とCFD解析(物体周りの流れについてシミュレーションできる。今回は人工魚礁周りの流れ)を用いて、魚類の蝟集(集まる)要因について研究しています。

表面性状が異なる円柱に対する魚群の蝟集行動

この研究は,円柱構造物に対するイサキParapristipoma trilineatum の蝟集行動について調べたものです.水深の浅い水槽の中央に円柱構造物を設置して魚群を放流し,魚群構成尾数と構造物の表面性状を変化させた時の行動の違いを観察しました.魚群の行動特性を定量的に評価するため,三宮らによって提案された魚群行動モデルに一部変更を加えたものを使用して,各円柱構造物に対するイサキ魚群の蝟集行動を解析しました.その結果,個体数5尾以下の場合では円柱に蝟集する行動がほとんどみられず,水槽壁に沿って遊泳することが多かったのに対し,10尾以上の場合では壁と円柱の中間のあたりで停滞する行動がみられました.さらに個体数25尾の時では表面が粗い円柱に対して蝟集する行動が確認できました.

魚群行動モデルによる行動評価の結果,5尾以下の個体数ではどのタイプの円柱構造物に対しても誘引作用力は働きませんでした.そして,個体数10および25尾において構造物の粗度が大きくなるにつれて,構造物の誘引作用力は大きな値を示しました.これらのことから,イサキが構造物に対して蝟集行動を示すのは少なくとも6〜10尾以上の個体数で群れを形成している時であること,そして表面性状の粗い構造物に対して特に強い蝟集行動を示すことが分かりました.

参考論文
  • K. Suzuki, T. Takagi, T. Hiraishi: Video analysis of fish schooling behavior in finite space using mathematical model, Fish. Res., Vol. 60, pp. 3-10 (2003). [Science Direct]

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